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東京高等裁判所 昭和59年(行コ)22号 判決

横浜市神奈川区鶴屋町三丁目三二番地一五

控訴人

ヒルトン観光株式会社

右代表者代表取締役

小泉龍鳳

右訴訟代理人弁護士

小野寺富男

横浜市神奈川区栄町八番地六号

被控訴人

神奈川税務署長

渡辺淳一

右指定代理人

立石健二

三浦道隆

山寺信男

石黒邦夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決を取り消す。控訴人の昭和四四年四月一日から同 五年三月三一日までの事業年度分の法人税について、被控訴人が同五七年一二月二五日付けでした更正のうち課税所得金額欠損金五九八万四三八二円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。控訴人の昭和四五年四月一日から同四六年三月三一日までの事業年度分の法人税について、被控訴人が同四八年八月一三日付けでした再更正のうち、課税所得金額三五八万八九六七円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定のうち、税額五万二八〇〇円を超える部分並びに同四七年一二月二五日付けでした重加算税賦課決定(同四八年五月三一日付け異議決定により取り消された部分を除く。)を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、次のとおり附加、訂正するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏九行目、同九枚目表一行目、同六行目、同一一行目の各「(包衣)」を削る。

2  同一六枚目表八行目の「営繕費」を「営業費」と改める。

3  同二八枚目裏七行目から八行目にかけての「ものであつたのである。」の次に「また、被控訴人は、利用客組数がシーツ枚数以上の数値であつたことが確実であることを前提としているが、とうてい合理的根拠を有しない。」を加える。

4  同三一枚目表五行目の「明らかである。」の次に「三井観光の実質的経営権が小泉から第三者に譲渡された際に右使用権の性質について当事者間で何らかの約束がなされたとか金銭の授受があつたとされる証拠は一切なく、本件土地の他の共有者小泉との関係では依然控訴人は同族会社であることが明らかであるから、右譲渡の際に従来使用借権であつたものが借地権に変容するとはとうていいえない。そして、使用借主の権利は賃借権に比較して極めて制限的に解され、使用貸主の契約解除等はゆるやかに認められているため、使用借主の立場は極めて不安定であり、その権利に特別の経済的価値を認めることは困難というべきである。」を加える。

5  同三二枚目裏一行目の次に、行を変えて「ところで、昭和五五年法人税基本通達の一部改正がされ(同通達一三-一-一四)、借地権等の無償返還につき予め当事者間で届出しておけば無償返還が是認されるとの制度が認められ、課税実務の取扱いが大きく変更された。本件の場合、土地使用関係が終了したのは右通達改正前ではあるが、もしそれが右改正後に行われさえしたら、右届出をすることにより控訴人の行為は課税実務上も何ら問題なしとされたことになる。また、本件のように土地使用の初めに権利金の支払がなく、そのみなし課税もされなかつたようなものについては、土地使用終了時に借主が貸主に対し金銭的な請求をしないのはきわめて自然なことであり、控訴人の行為は右改正通達の趣旨からも容易に正当として是認されてしかるべきである。」を加える。

三  証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は次のとおり附加、訂正、削除するほかは原審判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三八枚目表一〇行目の「二万一五四七」を「二万三一六〇」と改め、同裏一一行目の「計算すると、」の次に「利用客数二八六〇組に対し売上額は合計七三九万六五四〇円であるから、」を加える。

2  同三九枚目表九行目の「供述部分は、」を「供述部分があるが、右認定に反する部分とともに、」と改め、同行の「措信する」の次に「こと」を加え、同裏一一行目の「考えられる」の次に「(この点は乙第二四号証によつても左右されるものではない。)」を加える。

3  同四〇枚目表四行目の「べきである」の次に「(なお、被控訴人が前出料飲税領収証控を右平均売上高の把握のみに使用し、利用客組数の推計にしなかつたのは、後者については前出アメリカンクリナースの請求書等による推計の方がより確度が高いと判断したためであることが容易に察せられるところ、前認定のところよりしてその判断に誤りはないというべきであるから、その間に恣意性を云云する余地はない)」を加え、同五行目の「五五」から同六行目の「であり、」までを「五九八九万一七六〇円(二五八六円×二万三一六〇)となつて、被控訴人主張の五五七二万〇五四二円を下らず、」と改め、同裏一行目の「五五七二万〇五四二円」の次に「を下らないからこれを右金額の限度とし、他方」を加える。

4  同四一枚目表六行目の「大内美明」の次に「、同松沢常朗」を加え、同裏九行目の「リース」を「シーツ」と改める。

5  同四四枚目表六行目の「九五三二枚」を「一万一八二九枚」と改め、同九行目の「計算すると、」の次に「利用客組数三四五四組に対し売上額は合計八三八万八四九〇円であるから、」を加え、同裏七行目から八行目にかけての「二三一四万」から同八行目から同九行目にかけての「であり、」までを、二八七二万〇八一二円(二四二八円×一万一八二九円)であつて、被控訴人主張の二三一四万三六九六円を下らず、」と改め、同一一行目の「となる」を「を下らない」と改める。

6  同四六枚目表七行目の「甲」の次に「第一号証、」を加え、同一〇行目の「香田亨太郎」を「松沢常朗」と改め、同一一行目の「同証言」を「証人香田亨太郎の証言」と改め、同裏一〇行目の「であつた」の次に「(なお、小泉は、昭和五一年八月一二日就任、同月一六日登記により代表取締役となつた)」を加える。

7  同四七枚目表二行目の「東洋綿花株式会社からの」を削り、同六行目の「同目東洋綿花株式会社からの」を「同四三年二月二二日」と改め、同裏六行目の「ままであつた」の次に「(なお、その保存登記は、昭和四四年五月二八日受付で、所有者を控訴人として経由された。)」を加え、同八行目の「その代金を手形で支払つて」を「その代金支払のため手形を振り出して」と改め、同一一行目の「、三井観光」から同四八枚目表一行目の「原告に」までを「てこれに三井観光の営業譲渡をすることとした。かくして三井観光は、昭和四四年五月一日付で同年四月二三日に」と改める。

8  同四九枚目裏九行目の「の各記載」を「において右土地使用権を地上権と表示したうえ相当高額な評価額の記載がされていること」と改める。

9  同五〇枚目表一行目の「存しないが、」の次に「本件の場合土地の使用目的等に鑑みると、通常ならば当然権利金、地代の授受を伴う貸借と認めることができ、契約の経済的実質の観点からみれば、権利金、地代を免除するとの条件下で賃貸契約が結ばれたのと同視することができるから、」を加え、同三行目の「原告は」から同一〇行目の「べきである。」までを削り、同裏五行目の「できない」の次に「さらに、控訴人は、昭和五五年に法人税基本通達の一部改正がされた(同通達一三-一-一四)が、本件土地使用関係の終了が右改正後に行われていたならば、右改正通達所定の届出をすることにより借地権の無償返還扱いが是認されたはずであるし、まして本件では、土地使用の初めに権利金の支払もなく、そのみなし課税もされなかつたのであるから、控訴人による無償返還扱いは正当なものとして是認されるべきであると主張する。しかしながら、右改正後の法人税基本通達一三-一-一四においても法人が借地上に所有する建物を借地権を含めない価額で譲渡した場合には通常収受すべき借地権の対価の額を贈与したものとして取り扱う原則を維持し、但し、借地権設定契約書において将来借地を無償で返還することが定められている場合で、かついずれもその旨が所定の方式で所轄税務署長に届けられているときに限つて、借地権の対価の額を収受しないことを課税上是認されるのであつて、右届出がされていない場合はその一事から右原則に戻るべきこととされているのであり、土地使用の初めに権利金の認定課税がされなかつたからといつて、右通達の適用を免れるべき理由も見当らないので、控訴人の右主張は、本件につき借地権の価額相当額に対する被控訴人の課税上の取扱いを非難すべき理由とするには程遠く、採用の限りではない。」を加える。

10  同五二枚目表八行目の「2」を「1」と改め、同行の「一七五〇万円につき、」の次に「成立に争いのない乙第二一号証の四によれば昭和四五年頃の控訴人の資本金の額は二〇〇万円であることが認められ、また、昭和四五年度においては、控訴人の繰越欠損金控除前申告所得金額が四〇四万九七二二円であり、雑収入計上もれが一三万五五〇〇円であることは、前記のとおり当事者間に争いがなく、売上計上もれが九〇五万四二七九円であり、給料手当否認額が七五万二九二〇円で、建物等譲渡減少計上が三五〇〇万円であることは、前認定のとおりであるところ、広告宣伝費認容一〇万〇五七五円、賃借料認容四二万九〇〇〇円、事業税認定損一四七万九三六〇円、修繕費認容五万一九〇〇円、営業費認容二万六〇〇〇円、受取利息過大計上二〇万六一九二円、支払利息割引料認容五八万八一五一円、固定資産税売却損認容一二〇万円、寄付金認容一七五〇万円の減算金額があることは、後記のとおりであるから、これらの各金額を前提として」を加え、同九行目の「別表四記載のとおり」を削り、同一〇行目「すると」の次に「別表四記載のとおり」を加える。

11  同五三枚目表六行目の「認定」を削り、同七行目の「所得金額は」を「所得金額が」と改め、同行目の「であり、」を「であることは当事者間に争いがなく、右更正に所定の過大認定がないことは前記認定のとおりであり、」と改め、同裏六行目の「2」を「1」と改め、同一〇行目の「3」を「2」と改める。

12  同五四枚目裏一行目の「増加」を「課税」と改め、同九行目の「また」から同一一行目の「であり」までを「ところで、昭和四八年五月三一日付異議決定においては、控訴人の昭和四五年度分法人税の重加算税賦課の対象とされた所得は七二万七九六二円とされたことは当事者間に争いがないから、」と改める。

二  以上のとおりであつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 髙野耕一 根本眞)

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